【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第29話 大切なお話があります
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「アルベール様。本日はお誘いいただき、誠にありがとうございます」
「……いえ。それで、大切なお話というのは……?」
恒例の二週間に一度のお茶会の日。私は前もってお手紙でアルベール様に「大切なお話があります。真剣なことです」と告げていた。なので、アルベール様はいつもよりも緊張されたような面持ちをされている。……顔だけは、本当に百点満点よね。中身はマイナスなのだけれど。
「そ、その、婚約の解消について……は」
そして、アルベール様は恐る恐るそう切り出された。どうやら、緊張したような面持ちだったのは婚約の解消についてだと、勘違いされたからだったらしい。……なんというか、アルベール様らしい理由だ。そう思ったら、少しおかしくて。私は「ふふっ」と笑ってしまった。でも、アルベール様はそれをどう捉えられたのか、「やっぱり、俺は……」なんておっしゃる。……違うのに。
「……真剣で大切なお話ですが、婚約関連のお話ではありません。それに、約束の三ヶ月はまだ先ですから」
私がそう言えば、アルベール様はホッと一息をつかれた。……そんなに、私の婚約の解消が嫌なのだろうか。そこまで一途に想われるって、ある意味とても幸せなことなのかもしれない。たとえ少し歪んでいたとしても、アルベール様の愛情はまだマシだ。……あの人よりも、ずっとずーっとマシ。
「実は、アルベール様にお話をしていなかったことがあるのです」
ぐっと手のひらを握りしめて、私はアルベール様を見据える。アルベール様のことだから、私の過去のことくらいは調べられているかもしれない。でも、他人が話したことでは当の本人がどう思っていたかなんて、分からない。だから、私が述べるのは真実。そして、自分の気持ち。