【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました

「分かりました。分かりましたよ! では、アルベール様が何故あんな態度を私に取っていらっしゃったのか、理由を教えてくださいませんか!?」

 私がそう言ってアルベール様に詰め寄れば、アルベール様は露骨に私から視線を逸らされる。その頬は少しばかり赤くなっており、なんだか意外だった。……もしかして、照れていらっしゃるのだろうか? 今の言葉のどこに、照れる要素があったのかは分からないのだけれど。

「え、えっと……じゃあ、まずは何処から……」
「……私が質問をさせていただきますので、それに答えていただければ、と」

 このお方に長々と話をさせると分かりにくい気がする。そう思ったので、私が問いかけたことに対して回答していただくという形をとることを提案した。すると、アルベール様は静かに頷かれる。どうやら、納得してくださったようだ。

「じゃあ、まず一つ目。何故、私と会話をしてくださらなかったのですか? ほかのお方とは、まだ会話をされるのに」

 私は一つ目にその質問を選んだ。アルベール様は実はほかの貴族のご令嬢とは、まだ少しだけ会話をされるのだ。とはいっても、アルベール様側の返答は「あぁ」「違う」「そうか」の三つのみ。あれで会話が成り立つのだから、ある意味素晴らしいと思う。ちなみにだけれど、仲のいい同性の方とはきちんと話す。……というか、今のアルベール様には寡黙の面影もありゃしない。

「……シュゼット嬢のことを見たら、言葉が頭から消えるのです。なんといいますか……まるで、聖なる力で俺の言葉が浄化されているような……」
「いや、私、浄化するような聖なる力なんて出していませんけれど……?」

 アルベール様は真剣な表情でそうおっしゃる。現実味のない回答だったけれど、その表情からしてどうやら嘘ではないようで。……もしかしてだけれど、この後もこんな現実味のない回答ばかりなのだろうか? そう思って、私は一度だけ身震いする。
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