【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「うぅ、勉強不足でした」
「いえ、俺が話していないんでしたら、俺が悪いです。……それに、今はある程度名誉が回復したと言っても、元々ナフテハール伯爵家はかなり落ちぶれていましたから」

 そうおっしゃって、アルベール様はパーティー会場を見渡す。装飾は結構豪華。まぁ、テーリンゲン公爵家には負けるのだけれど。

 本日はナフテハール伯爵家の当主であるヨハン様の誕生日を祝ったパーティーである。クールナン侯爵夫人のご実家ということは、夫人のお兄様か弟様なのよね。いつも以上にしっかりとあいさつをしなくちゃ。

「アルベール」

 それからしばらくした頃、ふと一人の男性に声を掛けられる。その男性の顔立ちは渋くて、ダンディといった言葉が似合いそうだ。それは、若い頃は大層モテたであろうことも容易に想像が出来た。そして、何処かクールナン侯爵夫人と雰囲気が似ていた。

「ヨハンおじ様。お世話になっております」
「いや、こちらこそ。アルベールが来てくれて、とても嬉しいよ。そちらが、アルベールの婚約者かい?」
「はい」

 アルベール様のその返事を聞かれた男性――ナフテハール伯爵は、私の方に視線を移されると「綺麗な子だね」とおっしゃってくださった。なので、私は静かに落ち着いて一礼をする。その後「シュゼット・カイレと申します」と自己紹介をする。その際にふらついたのはご愛嬌だ。
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