【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「そう、シュゼット嬢だね。僕はヨハン・ナフテハール。ナフテハール伯爵家の現当主だ。シュゼット嬢、アルベールのことをよろしく頼むよ。僕はこれでも姉さんの子供であるアルベールを、実の息子のように思っているからね。ま、僕独身なのだけれど」
「どく、しん、ですか?」
「うん、家を復興させようと頑張っていたら、婚期を完全に逃してしまってね。跡取りに関しては、アルベールの子を据えようと思っているから、ぜひとも二人以上子供をもうけてね」
「……はぁ」

 ナフテハール伯爵はそうおっしゃって、アルベール様の肩をポンと叩かれた。……独身。あの素晴らしき顔立ちで、独身。なんというか、世の中の不思議を見てしまった気がする。でも、家を復興させるのに必死だったらそれもあり得る……のかな?

「ヨハンおじ様は、クールナン侯爵家のある程度の援助をうまく活用して、家を復興させました。なので、俺はあの人のことを尊敬しています」

 アルベール様はナフテハール伯爵を見つめながら、そんなことをおっしゃる。……クールナン侯爵夫人も、家のことでかなり苦労されたみたいだし、アルベール様もいろいろと思うことがあるのだろうな。

「ま、今回のパーティーは完全な他人の家のパーティーというわけではないですし、気楽にいきましょう、シュゼット嬢」
「はい」

 私はそう返事をして、アルベール様と絡めた腕に力を入れた。うん、もう無理。足がふらつく……! そう思っていると、アルベール様がにっこりとされて私の方を見つめてこられた。絶対に、役得とか思っていらっしゃるのでしょうね。だって、胸当たっていますし。

(そう言えば、この間のドレスと違って胸が苦しくないわね……)

 まさかだけれど、このお方私の胸のサイズを把握していらっしゃるのでは……? そう思ったけれど、考えると怖いので考えないようにした。アルベール様の横顔をちらりと見つめれば、そのお顔はとても凛々しくて。……絶対に違うと、思いたかった。まぁ、願望なのだけれど。真実は、知らない。
< 117 / 142 >

この作品をシェア

pagetop