【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第33話 再会と……
それから一時間程度は何の問題もなくパーティーを楽しむことが出来た。それはきっと、このパーティーがそこまで大きな規模のものではなかったからだと思う。どうやらこのパーティーに招待されているのは、伯爵子爵くらいの家柄の人が主らしく、そこまで身分の高い人はいらっしゃらなかった。このパーティーに招待されている中で最も身分が高いのは、クールナン侯爵夫妻とアルベール様だし。
「シュゼット嬢。何か欲しいものはありますか? 飲み物、取ってきますよ」
「い、いえ、それくらい自分で出来ますから」
「歩くの、辛いんでしょう? 無理しなくてもいいので」
アルベール様にそう声を掛けられて、私はただ俯くことしか出来なかった。確かに、歩くのが辛い。元々靴擦れしやすい足なのか、慣れていない靴で歩くとすぐに足が痛くなってしまう。たまに血まみれになることもあるし。そう考えたら、ここは甘えた方が良いのかな?
「で、では、お願いします……」
「はい、頼まれました。シュゼット嬢は、ここに居てくださいね」
そうおっしゃったアルベール様は、私を休憩用の椅子に座らせると颯爽と飲み物を取りに行かれた。その後ろ姿を見つめながら、私は呆然とする。やっぱり、アルベール様は美形なのよね。周囲のご令嬢がうっとりとしたような表情で、アルベール様のことを見つめているもの。
(元々、私は釣り合わないって思っていたからアルベール様に婚約の解消をお願いしたのよね)
そう思うけれど、今は全然違う意味で婚約の解消がしたいと思っている。そりゃあまぁ、前よりはこの関係を続けてもいいかなぁと思うようにはなった。だけど、あの人と一生を添い遂げる勇気が今の私にはないのだ。あれだけ私のことを守ってくださろうとする男性、きっとほかにはいらっしゃらないのに。
「……シュゼット・カイレ様」
そんなことを考えていると、不意に私の名前が呼ばれる。その声は、この間確かに聞いた女性の声で。私が慌てて顔を上げれば、そこには相変わらず髪の毛をしっかりと巻いたリーセロット様がいらっしゃった。……リーセロット様、このパーティーに招待されていたのね。