【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「……何が、目的なのですか」
「あら、わたくしの目的なんて、一つしかないじゃない」
……そう、よね。リーセロット様の目的は、アルベール様との婚姻。邪魔な私を排除すること。つまり、リーセロット様は私に「アルベール様との婚約を破棄するように」とおっしゃりたいはず。……でも、今の空気だとそんなことをおっしゃりたいわけではないと思う。この空気は、そう。肌を刺すようなピリピリとしたものなのだ。殺気に満ち溢れている、と言えばいいのだろうか。
「ふふっ、わたくし、貴女が気に食わないの。そう、貴女が生きているだけで憎悪が湧きだしてしまうくらいには、ね。だから――」
そうおっしゃったリーセロット様は、何やら呪文を唱えられる。すると、その手には銀色に輝くナイフが握られていた。……あれで、私を殺そうということなのよね。少し、ナイフが濡れているように見えるのはどうして? そう思ったけれど、今の私にそんなことを考える余裕はなくて。私はやはりじりじりと後ずさることしか出来なかった。
(叫びたいのに、喉が震えて何も声が出ないわ……)
人間とは、本当の危機に陥ったら叫ぶことが出来ないのね。そう、思う。でも、時間は止まってくれない。ナイフを私に向けて近づいてこられるリーセロット様から、逃げなくちゃ、逃げなくちゃ。そう思うのに、肝心な時に足がもつれて転んでしまう。ダメ、これじゃあ私、ここで刺されて――。
「シュゼット嬢!」
そんな時、だった。私の身体に誰かが覆いかぶさってくる。その後、何やら気持ちの悪い音が私の耳に届いた。……何? そう思って、慌てて瞑ってしまった目を開ければ、私に覆いかぶさっているのは間違いなく……アルベール様。
「アルベール様?」
私は恐る恐るアルベール様に声をかけるけれど、アルベール様は小さく「だいじょう、ぶ、ですか?」とおっしゃる。まさか、まさかだけれど――。そう思って私がアルベール様の身体に触れようとすれば、アルベール様がその場で倒れこまれる。その瞬間、私はすべてを理解した。
「……いやぁぁっ!」
アルベール様が、私を庇って刺されたということ。それを私は理解した。理解してしまった。
「あら、わたくしの目的なんて、一つしかないじゃない」
……そう、よね。リーセロット様の目的は、アルベール様との婚姻。邪魔な私を排除すること。つまり、リーセロット様は私に「アルベール様との婚約を破棄するように」とおっしゃりたいはず。……でも、今の空気だとそんなことをおっしゃりたいわけではないと思う。この空気は、そう。肌を刺すようなピリピリとしたものなのだ。殺気に満ち溢れている、と言えばいいのだろうか。
「ふふっ、わたくし、貴女が気に食わないの。そう、貴女が生きているだけで憎悪が湧きだしてしまうくらいには、ね。だから――」
そうおっしゃったリーセロット様は、何やら呪文を唱えられる。すると、その手には銀色に輝くナイフが握られていた。……あれで、私を殺そうということなのよね。少し、ナイフが濡れているように見えるのはどうして? そう思ったけれど、今の私にそんなことを考える余裕はなくて。私はやはりじりじりと後ずさることしか出来なかった。
(叫びたいのに、喉が震えて何も声が出ないわ……)
人間とは、本当の危機に陥ったら叫ぶことが出来ないのね。そう、思う。でも、時間は止まってくれない。ナイフを私に向けて近づいてこられるリーセロット様から、逃げなくちゃ、逃げなくちゃ。そう思うのに、肝心な時に足がもつれて転んでしまう。ダメ、これじゃあ私、ここで刺されて――。
「シュゼット嬢!」
そんな時、だった。私の身体に誰かが覆いかぶさってくる。その後、何やら気持ちの悪い音が私の耳に届いた。……何? そう思って、慌てて瞑ってしまった目を開ければ、私に覆いかぶさっているのは間違いなく……アルベール様。
「アルベール様?」
私は恐る恐るアルベール様に声をかけるけれど、アルベール様は小さく「だいじょう、ぶ、ですか?」とおっしゃる。まさか、まさかだけれど――。そう思って私がアルベール様の身体に触れようとすれば、アルベール様がその場で倒れこまれる。その瞬間、私はすべてを理解した。
「……いやぁぁっ!」
アルベール様が、私を庇って刺されたということ。それを私は理解した。理解してしまった。