【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「……アルベール様」
私は小さくそう呟いて、下に向けていた視線を上げた。だけどその瞬間……とんでもないほどの嫌な予感が私の身体を駆け巡った。背筋に冷たいものが走ったような気がして、身体が震えて止まらなくなる。……これは、何だろうか。
「嫌な、予感」
そう呟いて、私はお部屋に一つしかない扉を見据えた。エスメーには下がってもらっている。ほかの侍女にもしばらくは一人にしてほしいと頼んである。家族は大方仕事中だろう。だから、この扉が開くことはほとんどないはずなのだ。
でも、ゆっくりと扉が開く。私が身を構えれば、そこには「予想していた人物」がいた。私の記憶の中で、忌々しく笑っていらっしゃる男性。ほかでもない――アルテュール・プレスマン様。
「……あれ、バレていた?」
その後、アルテュール様は身構える私を見て、けろっとそうおっしゃった。正直、嫌な予感がしなければ彼がここに来ることなど思いもしなかった。いや、いずれ彼は私に接触してくるだろうとは思っていた。だって、彼の目的は私だもの。彼が欲しいのはアルベール様じゃなくて私だもの。
「いえ、嫌な予感がしましたので」
「……悲しいなぁ。俺はこんなにも、シュゼット嬢を愛しているのに」
そうおっしゃったアルテュール様は、何やら呪文のようなものを唱えられる。それは、アルテュール様が得意にされている隠ぺい魔法の一つだろう。多分、私が助けを呼べないようにされた。逃げたいけれどここは二階だし、そもそも扉の方にはアルテュール様が立っている。逃げ道は、ない。
私は小さくそう呟いて、下に向けていた視線を上げた。だけどその瞬間……とんでもないほどの嫌な予感が私の身体を駆け巡った。背筋に冷たいものが走ったような気がして、身体が震えて止まらなくなる。……これは、何だろうか。
「嫌な、予感」
そう呟いて、私はお部屋に一つしかない扉を見据えた。エスメーには下がってもらっている。ほかの侍女にもしばらくは一人にしてほしいと頼んである。家族は大方仕事中だろう。だから、この扉が開くことはほとんどないはずなのだ。
でも、ゆっくりと扉が開く。私が身を構えれば、そこには「予想していた人物」がいた。私の記憶の中で、忌々しく笑っていらっしゃる男性。ほかでもない――アルテュール・プレスマン様。
「……あれ、バレていた?」
その後、アルテュール様は身構える私を見て、けろっとそうおっしゃった。正直、嫌な予感がしなければ彼がここに来ることなど思いもしなかった。いや、いずれ彼は私に接触してくるだろうとは思っていた。だって、彼の目的は私だもの。彼が欲しいのはアルベール様じゃなくて私だもの。
「いえ、嫌な予感がしましたので」
「……悲しいなぁ。俺はこんなにも、シュゼット嬢を愛しているのに」
そうおっしゃったアルテュール様は、何やら呪文のようなものを唱えられる。それは、アルテュール様が得意にされている隠ぺい魔法の一つだろう。多分、私が助けを呼べないようにされた。逃げたいけれどここは二階だし、そもそも扉の方にはアルテュール様が立っている。逃げ道は、ない。