【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第5話 三ヶ月の約束
「……ですが、いくらアルベール様が婚約の続行を望んでいらっしゃったとしても、私の気持ちはそう簡単には変わらないのですよ」
それから数分後。私はゆっくりと口を開いてそう言った。そもそも、一度植え付けられた苦手意識というものは、なかなか消えないのだ。たとえ、理由をあれだけしっかり(?)教えていただいたとしても。それを理解するには、かなりの時間を要する。……特に、あんな現実味のない理由だったら、なおさら。だったら、ここは一度持ち帰って次のお茶会の時までに答えを導き出すのが最善だろう。よし、そうしよう。
「なので、この件は一旦持ち帰って次の時に――」
私が、そこまで言ったときだった。アルベール様は私の顔にご自身のそれはそれは美しいお顔をぐっと近づけてこられる。その美しいお顔に私が見惚れていると、アルベール様は「チャンス! チャンスを、ください!」なんておっしゃった。それも、鼓膜が破れるかと思うほどの大音量で。本日、三度目。二度あることは三度あるとは、よく言ったものだ。
「チャンス、ですか……?
「えぇ、シュゼット嬢に見直していただくためのチャンスです!」
勢いよくそうおっしゃっているけれど、その表情はどこか悲しそうだ。……まだ、私に苦手と言われたことを引きずっていらっしゃるのだろうか? いや、別にそこまで気にしてほしくないのだけれど。罪悪感が、湧く。