【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「アルテュール様。私にとって、カトレイン様はとても大切なお友達なのです。……そんな彼女を、今回アルベール様を救ってくださった彼女を悪く言うなんて、私は貴方を心底軽蔑しますわ」

 私はアルベール様の服の袖をぎゅっと掴んで、そう言った。そうすれば、アルテュール様は私の方を強く睨まれる。昔は、確かにこの人が怖かった。忌々しかった。でも、今は怖さよりも怒りの方が勝っている。私の大切な人を傷つけて、大切なお友達を侮辱して。私を傷つけるだけだったら……まだ、許せたのに。なのに、今はまったく彼のことを許せそうにない。

「アルテュール様。こうなった以上、私は貴方のものにはなりません。心も、身体も」

 必死にそう声を張り上げて、私はそう言った。手は震えている。でも、その手をアルベール様が掴んでくださった。……だからきっと、大丈夫。

「リーセロット嬢を唆したのも、アルテュールでしょう? あの女、完全に壊れちゃってますよ。確かにあの女が実行犯ですが、罪が重いのはあんたの方だ」
「……はぁ、上手くいったと思ったのになぁ」

 アルテュール様はそうおっしゃると、勢いよく笑われた。……何が、おかしいのか私には分からない。だけど、たった一つだけ分かることがある。それは、アルテュール様のその緑色の目が赤黒く光っているということ。

「計算外だったのは、あのカトレインとかいう女だな」
「恨んでいるのだとしても、手を出さない方が賢明ですよ。カトレイン嬢には、オフィエルが付いている」
「……だよねぇ。あの男もかなり厄介そうだし。ま、俺は逃げようとは思わないし一旦捕まるとしますか」
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