【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「もしも、記憶がなくなったとしても、俺は間違いなく何度でもシュゼット嬢のことを好きになりますよ、だって」
「だって?」
「先祖に、そう言う人がいますから!」
「……でしょうね」

 私はアルベール様のお言葉に納得してしまった。あれが遺伝だとしたら、そう言う人がいてもおかしくはないもの。はぁ、執着って素晴らしいわ。でも、アルベール様の執着は少し嬉しく思ってしまう……かも。アルテュール様の執着は、あんなにも嫌だったのに。

「シュゼット嬢」

 ふと、アルベール様は私の額とご自身の額を合わせてこられる。だから、私は自然と上目遣いになりながらアルベール様を見据えた。すると、アルベール様はにっこりと笑ってこられる。何が、おっしゃりたいの?

「俺、シュゼット嬢のこと大好きです。シュゼット嬢も、俺のこと好きって思ってくれたんですよね?」
「えぇ」
「じゃあ……キスくらい、してもいいですか?」

 そして、そのお言葉だった。普段だったらきっと「無理です」とか「嫌です」とか「ふざけないでください」とか言っていたと思う。だけど、今日は違う。せっかくだし、今日だけはアルベール様に対して素直になる日ということに、しておこう。アルベール様のおかげで、私は助かったのだから。
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