【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「魔女の血を引く証拠は三つ。一つ、強大な魔力を持つこと。二つ、魔法を無効化出来、強力な魔法が使えること。三つ、発育が遅いこと」
「……そう、でしたね」

 アルベール様のお言葉に、私は静かに頷いてそう返事をした。魔女の血を引く人間の成長はゆっくりな場合が多いらしい。特に顔立ちと体型に現れるらしく、カトレイン様が童顔であまり大人っぽく見えないのはそう言うことだそうだ。本人は、かなり気にしていらっしゃるのだけれど。

「ま、カトレイン嬢は大丈夫でしょうね。あの令嬢はきっちりと自分の力をコントロールできていますし」

 そうおっしゃるアルベール様のお言葉に、私は安心するけれど少し複雑な気持ちにもなってしまう。そりゃあ、大切なお友達であるカトレイン様のことを褒められるのは、嬉しい。だけど……私がいるのにほかの女性を褒められるなんて。あぁ、これじゃあただの嫉妬深い女だわ。

「シュゼット?」
「なんでも、ありません」

 私がそう言って不貞腐れていると、アルベール様は「俺が好きなのは、シュゼットだけですよ」なんておっしゃってくださった。

「それに、カトレイン嬢に手を出したらオフィエルに殺されます。オフィエルは、カトレイン嬢のことを何よりも誰よりも大切に思っていますから」
「……だったら、良いのですけれど」

 私は小さくそう零す。すると、アルベール様は笑いながら「あの男の独占欲は、常軌を逸していますからね」なんておっしゃった。

「それを言うのならば、アルベール様の執着心も常軌を逸していますよね。アルベール様は執着心の塊ですか?」
「そうですね、そうかもしれません」

 そんな風にいつものように軽口を言い合って、私たちはどちらともなく笑い合う。……ようやく、私たちは気持ちが通じ合った。だから、少しくらい甘えてもいいですよね? そう思って、私はアルベール様に笑いかける。

 私はどうやら――この、事故物件にも思える男性に、恋をしてしまったようだから。
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