【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第6話 何故こうなった……
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「あっ、お嬢様。おかえりなさい……ませ」
私が自室に入ると、私の専属侍女であるエスメーが私の姿を見て目を丸くする。そりゃそうだ。今の私は誰と戦ってきたのか、と問いただしたいぐらいボロボロなのだ。ドレスはしわくちゃだし、髪の毛は綺麗にセットされていた面影もない。嵐の中に突っ込んできたのか、と言われてもおかしくなかった。正直に言えば、こうなるのことは私も予想外だった。
「お、お嬢様!? 本日は婚約者の方とのお茶会だったのでは……? 何故、そんな戦場に出向いたかのような格好に……」
「えぇ、本日は確かにアルベール様との二人きりのお茶会だったわ……」
遠い目をしながら、私はエスメーにそう言う。そりゃあ、エスメーも普通にアルベール様とお茶とお話をして帰ってくると思っていただろう。誰も嵐の中に突っ込みに行ったり、戦場に出向くなんて思うわけがない。
「え、えっと……はっ、まさか、婚約者の方に乱暴されて……!」
「違う違う! ……いや、ある意味違わないけれど……」
最後の方は、自分にしか聞こえない程度の音量だった。多分、エスメーの想像する乱暴とは既成事実を作ろうとしたとか、暴力とかそう言うことだろう。私がされた行為は乱暴といえば乱暴かもしれないけれど、そういうことじゃない。あの行為は――……。