【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
閑話1 アルベール・クールナンの考えるシュゼット・カイレについて

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「……何故、あんなにも可愛らしいんでしょうか」

 シュゼット嬢と二人きりのお茶会を終え、俺は自室に戻ってきていた。そして、いつものようにシュゼット嬢の衣装ノートを取り出し、本日の日付と衣装を書き込んでいく。初めは拙かった絵も、ほぼ毎週のように描いていれば自然と上手くなるというもので。最近では満足出来るものが描けている自信がある。まぁ、誰にも見せないので所詮自己満足でしかないのだけれど。

 しかし、本日は悲しいことに俺の寿命が縮まるような出来事がありまして。なんといっても、愛しの婚約者であるシュゼット嬢が俺に婚約の解消を求めてきたのです。……正直、寿命が二十年ぐらい縮んだのではないかと思った。だけど、シュゼット嬢と同じだけ生きるために寿命を気合で呼び戻す。だから、大丈夫。俺はずっとシュゼット嬢と一緒に、いられる。

「今日の装いも女神様の様でしたね……。ほかの女性など足元にも及ばない……」

 そんなことをつぶやきながら、俺は衣装ノートを閉じて元の場所に戻した。やはり、シュゼット嬢は何を身に纏っても似合いますが、一番は淡いブルー系統でしょうか。ドレスであろうがワンピースであろうが、シュゼット嬢の魅力をうまく引き立ててくれる。カイレ子爵家はあまり裕福ではないからか、シュゼット嬢はよく衣装をリメイクして着ている。あぁ、それでも似合う。似合いすぎる。早く、俺の元に来てくれたらいいのに。そうすれば……もっと、綺麗に着飾れる自信があるのに。

「あぁ、しかし。まさかシュゼット嬢に苦手意識を持たれていたなんて……。想定外すぎますね。通りで、ほかの女性と目の色が違うわけですか……」

 ほかの女性は、俺のことをぎらぎらとした目で見つめてくる。幼少期はそれが怖く、一時期は女性不信に陥っていたぐらいだ。だが、そんな俺の前にシュゼット嬢は現れた。一目で恋に落ちた。そして、分かった。
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