【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
 私の名前はシュゼット・カイレという。セロー王国で末端貴族と呼ばれているカイレ子爵家の長女。ちなみに、兄が一人いるので跡取りではない。その兄もつい先日婚姻し、妻を迎えた。私から見て兄嫁である彼女はとある男爵家の三女であり、明るい性格と世話好きな性格から瞬く間にカイレ子爵家になじんだ。もちろん、私も彼女のことを好意的に見ている。あのものぐさな兄の世話を焼いてくれているのだ。感謝しても感謝しても足りないぐらい。

 そして、私にも一年半ぐらい前に婚約した婚約者がいる。私が十八歳を迎えれば挙式を行い、相手方の家に向かうことになっている。しかし、私はそんな婚約者のことを特に好いていない。だって、あれだけ睨まれて無表情で見つめられて、言葉も大して交わさない。挙句彼を慕うほかのご令嬢に嫌がらせをされる始末。そんなことが起きたら、彼のことを好きになるなんて無理でしょう? そう言うこと。

(あ~、もうっ! もういい加減こっちも限界よ!)

 婚約の解消を申し出る一日前。私は寝台で寝転がりながらそんなことを心の中でぼやいていた。あと半年で私と彼は婚姻してしまう。でも、婚姻しても彼と私の関係が変わるとは到底思えない。だったらもう……婚約を解消するしかない。そこまで、私は追い詰められていた。
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