【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「では、お茶をするスペースに向かいましょうか。多分すぐに準備が出来ると思うので……」
そうおっしゃったアルベール様が、私の手を引いて移動しようとしたときだった。庭の奥の方から、何やら絶叫のようなものが聞こえてくる。なんと叫んでいるかは、よく聞こえない。でも、何だろうか。嫌な予感がする。あの叫び方は、アルベール様にそっくりな気が……。聞きたくない。
「嫌だー! ティナ、実家に帰らないでってば! 俺のこと捨てる気だ! 絶対にそうだ!」
「だーかーらー! ちょっと実家に顔を見せるだけだって言っているでしょう!? そもそも、あんたのことを捨ててもアルベールがいるから帰ってくるわよ!」
「今捨てるって言った! 俺のことを捨てるって言った! 絶対に実家になんて帰さないから! そのまま離縁届だけ送ってきて、俺と縁を切る気だろ!?」
「そうしたいのは山々だけれど、実際にはするわけないわよ!」
……うん、聞きたくない会話だった。何故か、私とアルベール様のここ数日のやり取りを聞いているようで、他人事には思えない。そう思いながらアルベール様のお顔を見上げると、何でもない風に「行きましょうか」とおっしゃる。うん、大体わかった。日常的な光景なのね。使用人たちも動じていないようだし。
「あらあら、旦那様は奥様にまた縋っていらっしゃって~」
「少しは学習していただきたいですよね。奥様が何をしたら怒るかが、どうして分からないのでしょうか……」
近くにいた数人の侍女が、そんな会話を交わしている。それを聞いた私は、一気にアルベール様との婚姻が嫌になった。アルベール様のご両親が、そう言うお方だとアルベール様のお話から読み取っていた。しかし、これはない。ほぼ私とアルベール様じゃない。……遺伝、怖い。
そうおっしゃったアルベール様が、私の手を引いて移動しようとしたときだった。庭の奥の方から、何やら絶叫のようなものが聞こえてくる。なんと叫んでいるかは、よく聞こえない。でも、何だろうか。嫌な予感がする。あの叫び方は、アルベール様にそっくりな気が……。聞きたくない。
「嫌だー! ティナ、実家に帰らないでってば! 俺のこと捨てる気だ! 絶対にそうだ!」
「だーかーらー! ちょっと実家に顔を見せるだけだって言っているでしょう!? そもそも、あんたのことを捨ててもアルベールがいるから帰ってくるわよ!」
「今捨てるって言った! 俺のことを捨てるって言った! 絶対に実家になんて帰さないから! そのまま離縁届だけ送ってきて、俺と縁を切る気だろ!?」
「そうしたいのは山々だけれど、実際にはするわけないわよ!」
……うん、聞きたくない会話だった。何故か、私とアルベール様のここ数日のやり取りを聞いているようで、他人事には思えない。そう思いながらアルベール様のお顔を見上げると、何でもない風に「行きましょうか」とおっしゃる。うん、大体わかった。日常的な光景なのね。使用人たちも動じていないようだし。
「あらあら、旦那様は奥様にまた縋っていらっしゃって~」
「少しは学習していただきたいですよね。奥様が何をしたら怒るかが、どうして分からないのでしょうか……」
近くにいた数人の侍女が、そんな会話を交わしている。それを聞いた私は、一気にアルベール様との婚姻が嫌になった。アルベール様のご両親が、そう言うお方だとアルベール様のお話から読み取っていた。しかし、これはない。ほぼ私とアルベール様じゃない。……遺伝、怖い。