【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「……アルベール様も、こんな私じゃ嫌だよね」

 そんなことをぼやきながら、私は婚約者であるアルベール様のことを思い浮かべる。名門侯爵家のご令息ということもあり、彼は社交界でとんでもなく人気のあるお方だ。しかし、彼は絶対に誰にも笑いかけない。表情が基本的に無なのだ。さらには口数も少なく、ぶっきらぼう。陰では「冷血貴公子」などとも呼ばれ、遠巻きにされている。……いや、でも本当に私とは釣り合わない。

 だって、アルベール様は見た目がそれはそれは麗しいお方なのだ。その性格が気にならないぐらい、容姿が素晴らしい。まぁ、私はそこまで容姿に執着がないので、あまり好意的には見えないのだけれど。むしろ、容姿が良い人はあまり好きではない。昔、容姿の良い男性といろいろあったから。

 それに対して、私は上の中ぐらいの容姿。家柄はアルベール様に対してかなり劣っている。私がひっくり返っても釣り合わない。むしろ、私が十人束になっても釣り合わない。いや、私が十人もいたらアルベール様は迷惑か。

「もう、婚約を解消しよう、そうしよう」

 あと半年。あと半年で、私とアルベール様は夫婦なってしまう。だったら……もう、婚約の解消に向けて動き出すしかない。この素晴らしい婚約を取り付けてくれた両親には悪いけれど、私の心の平和のためだ。この後は修道院にでも行けばいい。うん、私は元々男性嫌いだし仕方がないわよね。

「よし、明日アルベール様に婚約の解消をお願いしよう!」

 そう決意して、私は眠りについた。

 まさか私の言葉を聞いたアルベール様があんな行動に出るなんて――この時の私は想像も出来なかった。
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