【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
そんなことを考えながら、私はアルベール様とお茶をするスペースに向かう。しかし、大きくなる叫び声。……今まで、アルベール様とお茶会をしても、こんな叫び声が聞こえてきたことはないのだけれど? それは、どういうことなのかしら?
「アルベール様。こんな叫び声、私今まで聞いたことがないのですが……。これ、日常なのですよね?」
「えぇ、そうですよ。俺とシュゼット嬢の二人きりのお茶会の日には、決まって母が父を連れ出していましたので、知らないのも当然です」
「……そう、ですか」
つまり、私がクールナン侯爵家のお屋敷を訪れていた際は、いつも侯爵夫妻はいらっしゃらなかったのね。まぁ、普通こんな叫び声が日常だと知ったら逃げるわよ。危ないところだって思うわよ。今、私が実際にそう思っているのだから。
そう、私が思っているときだった。二つの人影が、はっきりと見える。……うん、ここらへんでもめていらっしゃったのね。通りでよく声が聞こえてくるはずだ。
「ティナ!」
「あぁ、もう! うるさ……い」
そして、ばっちりと私と視線が合ってしまった。私と、縋られている方の女性の視線が、ばっちりと交わる。その女性は、数回目をぱちぱちと瞬かせた後、縋っている男性の頭を思い切りはたかれていた。正直、見ているだけでもかなり痛そうだった。
「あ、アルベール。……今日、貴女の婚約者のご令嬢がいらっしゃる日……だった、っけ?」
「いえ、急に決めました。俺が、どうしても会いたくなって……」
「そ、そう……」
女性が、気まずそうに私から視線を逸らす。艶やかできれいな黒色の髪と、真っ赤な目が特徴的なその女性はクールナン侯爵夫人だろう。そして、何処かアルベール様にそっくりな顔立ちで、夫人に縋っている男性がクールナン侯爵。髪色は、アルベール様と同じで青だった。
「ティナ! 俺のこと、捨てないで!」
「……今この状態で、そんなことを叫べる貴方が私は恐ろしいわ……」
夫人が、そうおっしゃって遠いところを見つめられていた。うん、その気持ち分かります。分かりすぎて……頭が痛くなってきた。
こうして、私はアルベール様のご両親との対面を、予期せぬ形で果たしてしまった。クールナン侯爵が夫人の腰に巻き付いているという、とんでもない光景も、見てしまった。……正直、見てはいけなかったと後悔している。そして、あれが私の未来の姿だと思ったら普通に泣きたくなった。
「アルベール様。こんな叫び声、私今まで聞いたことがないのですが……。これ、日常なのですよね?」
「えぇ、そうですよ。俺とシュゼット嬢の二人きりのお茶会の日には、決まって母が父を連れ出していましたので、知らないのも当然です」
「……そう、ですか」
つまり、私がクールナン侯爵家のお屋敷を訪れていた際は、いつも侯爵夫妻はいらっしゃらなかったのね。まぁ、普通こんな叫び声が日常だと知ったら逃げるわよ。危ないところだって思うわよ。今、私が実際にそう思っているのだから。
そう、私が思っているときだった。二つの人影が、はっきりと見える。……うん、ここらへんでもめていらっしゃったのね。通りでよく声が聞こえてくるはずだ。
「ティナ!」
「あぁ、もう! うるさ……い」
そして、ばっちりと私と視線が合ってしまった。私と、縋られている方の女性の視線が、ばっちりと交わる。その女性は、数回目をぱちぱちと瞬かせた後、縋っている男性の頭を思い切りはたかれていた。正直、見ているだけでもかなり痛そうだった。
「あ、アルベール。……今日、貴女の婚約者のご令嬢がいらっしゃる日……だった、っけ?」
「いえ、急に決めました。俺が、どうしても会いたくなって……」
「そ、そう……」
女性が、気まずそうに私から視線を逸らす。艶やかできれいな黒色の髪と、真っ赤な目が特徴的なその女性はクールナン侯爵夫人だろう。そして、何処かアルベール様にそっくりな顔立ちで、夫人に縋っている男性がクールナン侯爵。髪色は、アルベール様と同じで青だった。
「ティナ! 俺のこと、捨てないで!」
「……今この状態で、そんなことを叫べる貴方が私は恐ろしいわ……」
夫人が、そうおっしゃって遠いところを見つめられていた。うん、その気持ち分かります。分かりすぎて……頭が痛くなってきた。
こうして、私はアルベール様のご両親との対面を、予期せぬ形で果たしてしまった。クールナン侯爵が夫人の腰に巻き付いているという、とんでもない光景も、見てしまった。……正直、見てはいけなかったと後悔している。そして、あれが私の未来の姿だと思ったら普通に泣きたくなった。