【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「いえ、持ち上げて落とされました。あの母様が突き落とすなんて生ぬるいこと、するわけじゃないですか。あの人、大人の男一人くらいならば余裕で持ち上げて運びますからね」
「……そう、ですか」
何だろうか、聞いてはいけないことを聞いた気がした。うん、そりゃあ怯えるわよね。自分の父親が母親に持ち上げられて落とされる光景なんて日常的に見ていたら、そう思うのも仕方がない。怯えても当たり前だと思う。
「でも、きちんと軽傷で済むように計算して落としていますからね。死んだら目覚めが悪いとか、言っていました。なので、シュゼット嬢も俺を落とすときはぜひとも計算して落としてくれると、助かります」
「……落としませんよ。というか、普通の女性は大人の男性を持ち上げて落とすなんて芸当、出来ませんからね!?」
いや、アルベール様の女性像おかしくありません? 私にもそんな力があると思っていらっしゃるのですか? まぁ、クールナン侯爵夫人とは背丈が似ているので、そう思っても仕方がない……わけないでしょう!?
「じゃあ、普通に半殺しぐらいでお願いします」
「どうしてそうなるのですか……」
「父様によると、爺様は喧嘩のたびに婆様に半殺しにされていたそうなので」
「……この家、とんでもない事故物件男の集まりですか……?」
それを実感して、嫌になりそうだった。いや、もうすでに嫌になっている。先祖代々こんな感じとか、普通にやめてほしい。……つまり、もしも私とアルベール様の間に子供が生まれて男の子だったら、こうなるの……? 怖い。遺伝に抗いたい。そうなったらできれば頑張って、私の遺伝子。
(っていうか、そもそもアルベール様と婚姻する可能性がどんどん消えかけているわよ……)
心の中でそう思いながら、私は隣で嬉しそうに笑っていらっしゃるアルベール様を見据える。……私、クールナン侯爵夫人のように、なれるかしら? そう思って、ため息をついた。すごく、逃げたい。ここ数日何百回思ったか分からないことを、私はまた思った。
「……そう、ですか」
何だろうか、聞いてはいけないことを聞いた気がした。うん、そりゃあ怯えるわよね。自分の父親が母親に持ち上げられて落とされる光景なんて日常的に見ていたら、そう思うのも仕方がない。怯えても当たり前だと思う。
「でも、きちんと軽傷で済むように計算して落としていますからね。死んだら目覚めが悪いとか、言っていました。なので、シュゼット嬢も俺を落とすときはぜひとも計算して落としてくれると、助かります」
「……落としませんよ。というか、普通の女性は大人の男性を持ち上げて落とすなんて芸当、出来ませんからね!?」
いや、アルベール様の女性像おかしくありません? 私にもそんな力があると思っていらっしゃるのですか? まぁ、クールナン侯爵夫人とは背丈が似ているので、そう思っても仕方がない……わけないでしょう!?
「じゃあ、普通に半殺しぐらいでお願いします」
「どうしてそうなるのですか……」
「父様によると、爺様は喧嘩のたびに婆様に半殺しにされていたそうなので」
「……この家、とんでもない事故物件男の集まりですか……?」
それを実感して、嫌になりそうだった。いや、もうすでに嫌になっている。先祖代々こんな感じとか、普通にやめてほしい。……つまり、もしも私とアルベール様の間に子供が生まれて男の子だったら、こうなるの……? 怖い。遺伝に抗いたい。そうなったらできれば頑張って、私の遺伝子。
(っていうか、そもそもアルベール様と婚姻する可能性がどんどん消えかけているわよ……)
心の中でそう思いながら、私は隣で嬉しそうに笑っていらっしゃるアルベール様を見据える。……私、クールナン侯爵夫人のように、なれるかしら? そう思って、ため息をついた。すごく、逃げたい。ここ数日何百回思ったか分からないことを、私はまた思った。