【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「テーリンゲン公爵家のパーティーには、伯爵以上の爵位を持つ貴族しか招待されないのでは……? 私、子爵家の生まれなので、あまり……」
「いえ、今回のパーティーはパートナー同伴という条件がありまして。だから……シュゼット嬢に、俺のパートナーとして参加してほしくて。母様に同行を頼んだら、父様に殺されますので」
「……あぁ」

 私はそのお言葉で納得してしまった。ほとんどのパーティーは単独で参加できるけれど、中にはパートナー同伴が条件のパーティーもあるのだ。アルベール様には兄弟姉妹がいらっしゃらないし、母親にも頼めない。そうなると、私を誘うのが妥当か。

「……私、子爵家の娘ですけれど、良いですか?」
「えぇ、そこは主催側のオフィエルに許可を得ていますので」

 アルベール様はそうおっしゃって、私の返答を待たれる。……う~ん、アルベール様が主催者側の許可を得ているのならば、私が断る理由もないか。そもそも、アルベール様も人前だとあまりべたべたされないだろうし。うん、別に参加してもいいや。

「分かりました。では、パートナーとして参加させていただきます」
「そうですか……! では、当日のドレスとかアクセサリーの類はこちらで用意しておきますね! パーティーには、俺と一緒に向かいましょう!」
「……待ってください、まさか、それが狙いでは……?」
「まさか!」

 そうおっしゃるけれど、表情は先ほどとは違って明るい。そうですか、そうですか。私を着飾るのが目的ですか。……嵌められた気がする。でも、まぁ……。

(そんな高位貴族主催のパーティーになんて、滅多なことでは出られないからいい経験になるか)

 心の中でそう思って、私は一人はしゃぐアルベール様を冷たい視線で見つめた。うん、ですが、人前ではこんな風にはしゃがないでくださいね。そう思って、私はアルベール様にあとで注意しておこうと心に刻み込んだ。
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