【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「では、シュゼット嬢。そろそろテーリンゲン公爵家に向かいましょうか」
「……えぇ」

 私は差し出されたアルベール様の手に、自分の手を重ねる。正直に言って、今この状況でこの手はとてもありがたい。救いの手にも、見えてしまう。……ヒールが高すぎて、歩きにくいのだ。多分、しばらくはおぼつかない。

 何でも、今回のパーティーはテーリンゲン公爵家の長男が主催らしい。目的は婚約者のお披露目だとかなんとか。正直、テーリンゲン公爵家の方々は遠目からしか見たことがない。しかし、遠目から見ただけでもそのお顔の良さが分かるので、美貌の一族と呼ばれているのも間違いではないだろうな。

「そう言えば、シュゼット嬢はオフィエルの婚約者であるカトレイン嬢と、親しいのですよね?」
「えぇ、そうですね。カトレイン様とは、個人的に親しくさせていただいております」

 カトレイン様とは、私の友人であるカトレイン・メレマ様のこと。彼女はテーリンゲン公爵家の次男であるオフィエル様の婚約者である。お二人は幼馴染らしく、その延長で婚約したらしい。でも、とても仲睦まじいご様子は噂になっており、心の中で「羨ましい」と思ったものだ。……まぁ、カトレイン様にはカトレイン様なりのお悩みがあるらしいのだけれど。そこは、人それぞれ。ちなみに、彼女は伯爵家のご令嬢なのでこのパーティーにも参加していらっしゃるはず。
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