【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「シュゼット嬢、辛くなったら、いつでも言ってくださいね」
「は、はい」

 アルベール様のそのご厚意が、嬉しく感じてしまう。しかし、相変わらずおぼつかない足取り。うぅ、これからはもっとヒールの高い靴で歩く練習もしなくちゃ……。そう思いながら、私はアルベール様の腕にしがみつく。胸が当たってしまっているが、決してわざとではない。決して。

「アルベール様、申し訳ございません。胸が、当たって……」

 正直、胸がきついのはこの際黙っておこう。私の胸は同年代の女性よりも大きく、発育がいいと言われ続けてきた。羨ましがられることも多いけれど、この胸の所為で着られるドレスのデザインが少ないのは、結構辛い。

「い、いえ、シュゼット嬢。気にしないでください。……むしろ、嬉しいです、から」

 アルベール様は、そうおっしゃってくださる。だから、私はホッとした。ちなみに、最後の方のお言葉は軽く無視。やっぱり男性って、女性の胸が好きなのね。アルベール様も、大きい方がいいのかしら? う~ん、クールナン侯爵夫人は平均的な大きさだったと思う。うぅ、スレンダーな美女って私からすれば憧れの存在なのよね……。

「シュゼット嬢の胸、その、すごく……」

 そんなお言葉が小さく耳に届いたけれど、こちらも無視だ。こんな人前で、私の胸に意識を奪われないでほしい。そう思うけれど、アルベール様の腕にすがると自然と胸が当たってしまうのも、また真実で。だから、私は黙ることしか出来なかった。うぅ、やっぱり練習しよう。そうじゃないと、こんなことになってしまう……!
< 47 / 142 >

この作品をシェア

pagetop