【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「えっと、その、オフィエル様やシュゼット様から聞いていたお方とは、随分と違うお方で……」

 カトレイン様が、戸惑っていらっしゃる。えぇ、そうでしょうね。中の上とか、そこら辺の容姿の女に抱き着いて周囲を威嚇する美形の男性。私が周囲の人間だったら、警戒して近づかないし話しかけもしない。それに、カトレイン様は私が常々アルベール様との関係に悩んでいたことを知っていらっしゃるから、余計にそう思われるのだろう。

「えぇ、そう思いますよね? この件についてはまた後程お話をさせていただきますわ……」

 遠い目をして、そう言うことしか私は出来ない。今話すことは、到底できないことだわ。だって、いろいろな人がいらっしゃるのだもの。今度、二人でお茶をしながらお話するに限る。

「わ、分かりましたわ。今度ぜひ、お茶をしましょう」

 カトレイン様と私は、苦笑を浮かべながらそんな会話をする。ちなみに、カトレイン様は普通にオフィエル様にくっついていらっしゃる。腕を絡めるといういたって普通の形なので、別におかしくはない。おかしいのは私とアルベール様だ。うん、おかしい。場違いグランプリ優勝だ。もういっそ、殿堂入りと言って過言ではない。

「カトレイン。そろそろあいさつ回りに行こうか。ごめんね、兄が主催のパーティーなのに、キミにも付き合ってもらっちゃって……」
「いいえ、お義兄様にもいろいろとお世話になっておりますもの。私で力になれるのならば、ぜひ」
「カトレインは本当に優しい子だね。じゃあ、アルベール。……二時間後に、いつもの場所に」
「はい」

 そうおっしゃったオフィエル様は、カトレイン様と腕を組んだまま歩き出される。まさに、美男美女。そこにいるだけでオーラが違う。しかも、事故物件の香りがしない。……いいなぁ。

「そう言えば、アルベール様。いつもの場所とは?」
「……いえ、大したことではありませんよ。俺とオフィエルと……あと、四人が度々会話をするために使っている場所です。いろいろと、話すことがあるので……」
「そうなのですか」

 きっと、お仕事のお話なのよね。殿方も大変だわ。そう思いながら、私はアルベール様の横腹を肘でつついた。お願いだから、この体勢はやめて。そう言う意味を込めていたkれ度、伝わっているかは定かではない。……いや、むしろ伝わっていないと思う。……悲しい。
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