【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「ですが、そろそろ戻ってこられると思いますよ」
そうおっしゃって、カトレイン様はジュースを口に運ばれる。そう、よね。そろそろパーティーもお開きだって言うから、本当にそろそろ戻ってこられないと困るわ。しかし、冷たい視線以外は比較的平穏に過ごせたのではないかしら。
「……ふぅ、でも、それなりに平和に――」
「――シュゼット・カイレ嬢」
私がぽろっと言葉を零しかけたとき、私の側で私の名前が呼ばれる。……ここで私の名前を知っているお方は、少ないだろう。それに、この声はアルベール様のものではない。そもそも、アルベール様は私のことをフルネームでは呼ばない。
そう思って、私がそちらに視線を向ければ私の心臓は大きな音を立てた。……やっぱり、先ほどの人物は彼だったのね。そう思って、息をのむ。睨みつけるように彼を見つめれば、その彼は嬉しそうに目を細めた。……昔から、こんな人だったわね。
「……シュゼット様?」
私のことを心配してくださるかのように、カトレイン様がそう声をかけてくださる。だから、私は「大丈夫です」とだけ返した。でも、彼のことを強く睨み続けてしまう。
「そんなにも敵意を露わにしてもらって、嬉しいなぁ。……シュゼット嬢は、俺のことが嫌いだよね。本当に嬉しいよ」
「……嫌われて嬉しいだなんて、とんだ変態野郎ですよね」
「まぁね。俺はね、シュゼット嬢に嫌われたくて嫌われたくて、仕方がないからね」
そうおっしゃって、彼は私に一歩一歩近づいてこられる。私は逃げるように後ずさるけれど、すぐに背に壁が当たった。そして、彼のその濃い緑色の目が私を射抜く。……怖かった。
そうおっしゃって、カトレイン様はジュースを口に運ばれる。そう、よね。そろそろパーティーもお開きだって言うから、本当にそろそろ戻ってこられないと困るわ。しかし、冷たい視線以外は比較的平穏に過ごせたのではないかしら。
「……ふぅ、でも、それなりに平和に――」
「――シュゼット・カイレ嬢」
私がぽろっと言葉を零しかけたとき、私の側で私の名前が呼ばれる。……ここで私の名前を知っているお方は、少ないだろう。それに、この声はアルベール様のものではない。そもそも、アルベール様は私のことをフルネームでは呼ばない。
そう思って、私がそちらに視線を向ければ私の心臓は大きな音を立てた。……やっぱり、先ほどの人物は彼だったのね。そう思って、息をのむ。睨みつけるように彼を見つめれば、その彼は嬉しそうに目を細めた。……昔から、こんな人だったわね。
「……シュゼット様?」
私のことを心配してくださるかのように、カトレイン様がそう声をかけてくださる。だから、私は「大丈夫です」とだけ返した。でも、彼のことを強く睨み続けてしまう。
「そんなにも敵意を露わにしてもらって、嬉しいなぁ。……シュゼット嬢は、俺のことが嫌いだよね。本当に嬉しいよ」
「……嫌われて嬉しいだなんて、とんだ変態野郎ですよね」
「まぁね。俺はね、シュゼット嬢に嫌われたくて嫌われたくて、仕方がないからね」
そうおっしゃって、彼は私に一歩一歩近づいてこられる。私は逃げるように後ずさるけれど、すぐに背に壁が当たった。そして、彼のその濃い緑色の目が私を射抜く。……怖かった。