【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「その目、最高だね! キミの脳内がすべて俺で支配されていて……最高だよ……!」
彼はそうおっしゃって、うっとりとした目で私のことを見つめてくる。……彼は、いつもそうだった。幼い頃から私に酷い言葉を浴びせ、意地悪をしてきた。そして、自分を嫌うようにと言ってきた。……彼の言葉通りになってしまうのは嫌だったけれど、酷い言葉も意地悪もどんどん悪化して。……私は、いつの間にか彼の望み通りに彼を嫌っていた。
「シュゼット嬢。でも、少し気に入らないよねぇ。俺がいるのに、ほかの男と婚約するなんてさ」
「……そんなの、私の勝手じゃないですか」
「いいや、違うね。キミは俺のことだけを考えていなくちゃいけない」
「っつ!」
私の背が、勢いよく壁に押し付けられる。痛い、苦しい、近づかないで……! そう言う意味を込めて彼を睨みつけるけれど、彼は全く動じない。ただ、その濃い緑色の目で私を見つめるだけだ。
「シュゼット様!」
カトレイン様が、私のことを助けてくださろうとする。でも、彼はただにっこりと笑って「命が惜しかったら、来ない方が良いよ」とカトレイン様に告げた。どうやら、周囲の人は誰もこの空気に気が付いていないようで。……大方、彼がこの光景を魔法で隠しているのだろう。昔から、そう言う魔法がお得意だったから。
「だーいじょうぶ。俺はね、キミのことを愛しているんだ。嫌いで、大嫌いで、でも大好き。昔キミは言ったよね。……壊れているって。でもさ……それこそ、真実の愛だと思わない?」
「ふざ、けたこと、言わないで……!」
「ふざけてなんていないよ。……じゃあね、シュゼット嬢。次に会う時は――きっと、もっと楽しいことが起こるよ」
彼はそうおっしゃって、私とカトレイン様の側から立ち去っていく。その後、私はただその場に座り込むことしか出来なかった。そして、脳内に嫌な記憶の数々が駆け巡る。たったそれだけのことなのに……何故か、私の意識は遠のいていく。
(あぁ、嫌だ)
心の中でそう唱えて、私は彼の後ろ姿を見つめた。
アルテュール・プレスマン。それが、私に歪な執着を向ける、「一人目」の男性――……。
彼はそうおっしゃって、うっとりとした目で私のことを見つめてくる。……彼は、いつもそうだった。幼い頃から私に酷い言葉を浴びせ、意地悪をしてきた。そして、自分を嫌うようにと言ってきた。……彼の言葉通りになってしまうのは嫌だったけれど、酷い言葉も意地悪もどんどん悪化して。……私は、いつの間にか彼の望み通りに彼を嫌っていた。
「シュゼット嬢。でも、少し気に入らないよねぇ。俺がいるのに、ほかの男と婚約するなんてさ」
「……そんなの、私の勝手じゃないですか」
「いいや、違うね。キミは俺のことだけを考えていなくちゃいけない」
「っつ!」
私の背が、勢いよく壁に押し付けられる。痛い、苦しい、近づかないで……! そう言う意味を込めて彼を睨みつけるけれど、彼は全く動じない。ただ、その濃い緑色の目で私を見つめるだけだ。
「シュゼット様!」
カトレイン様が、私のことを助けてくださろうとする。でも、彼はただにっこりと笑って「命が惜しかったら、来ない方が良いよ」とカトレイン様に告げた。どうやら、周囲の人は誰もこの空気に気が付いていないようで。……大方、彼がこの光景を魔法で隠しているのだろう。昔から、そう言う魔法がお得意だったから。
「だーいじょうぶ。俺はね、キミのことを愛しているんだ。嫌いで、大嫌いで、でも大好き。昔キミは言ったよね。……壊れているって。でもさ……それこそ、真実の愛だと思わない?」
「ふざ、けたこと、言わないで……!」
「ふざけてなんていないよ。……じゃあね、シュゼット嬢。次に会う時は――きっと、もっと楽しいことが起こるよ」
彼はそうおっしゃって、私とカトレイン様の側から立ち去っていく。その後、私はただその場に座り込むことしか出来なかった。そして、脳内に嫌な記憶の数々が駆け巡る。たったそれだけのことなのに……何故か、私の意識は遠のいていく。
(あぁ、嫌だ)
心の中でそう唱えて、私は彼の後ろ姿を見つめた。
アルテュール・プレスマン。それが、私に歪な執着を向ける、「一人目」の男性――……。