【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「カトレイン嬢、そんな奴と結婚したら苦労しそうですよね。特に、オフィエルの妻なんて悪意に晒されることになる」
「カトレインが苦労することはないし、悪意の中になんて放り出さない。だって、俺が彼女をずっとずーっと守ってあげるから」
「……狂ってやがる」
「キミもいい加減、頭がおかしいけれどね」

 オフィエルは何でもない風にそう言いながら、けらけらと笑った。この男の、何処がいいのだろうか。そう思うが、オフィエルは大層モテる。本人はカトレイン嬢以外には興味がないため、適当にあしらってはいるが。それでもカトレイン嬢の不安は尽きないだろう。

「……でも、オフィエルよりは本当にマシ。オフィエルは幼馴染の延長だとか言って、メレマ伯爵夫妻に婚約を受け入れさせた。あちらもオフィエルならば……と婚約を受け入れたみたいですけれど、俺からすればその男が一番危険」
「褒めても何も出ないよ」
「褒めていませんよ」

 俺のそんな言葉に「そっか」とだけ返し、オフィエルはテーリンゲン公爵家の屋敷の廊下を歩いていく。だから、俺も続いた。……このオフィエルという男は、怒らせると大層面倒である。しかも、オフィエルはシュゼット嬢という俺の弱みを握っている。だから、逆らうことは得策じゃない。

「あとさ、一つだけ言っておくと、カトレインに余計なことを言ったら、キミの命はないから」
「はいはい、分かっています。何度も何度も、忠告しないで」
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