【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
閑話4 アルベールの幸せ
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「うぅ、シュゼット嬢、シュゼット嬢がぁ……!」
夜の八時過ぎ。空が真っ暗になったくらいの時間に、俺はとある部屋の前でウロチョロとしていた。この部屋は、愛しの婚約者であるシュゼット嬢が眠っている部屋だ。多分母様に見られたら怒鳴り散らされるでしょうが、俺は部屋の前でウロチョロすることを止められなかった。……母様や侍女たちがシュゼット嬢を看てくれていますが、それでも心配は尽きない。……あぁ、やっぱり俺があの場所を離れたのが原因か……。
「シュゼット嬢の側に、いるべきだった……」
オフィエルとの約束なんて、すっぽかせばよかった。仕事の話なんて、いつでもできたのに。シュゼット嬢を放ってまで、することじゃなかった。後悔は先に立たないと知っているのに、脳内に浮かぶのは酷い後悔ばかり。……あぁ、どうしてこんなことになったのだろうか。
「アルベール。シュゼットちゃんの目が覚めたから、少しだけお話をしなさい」
俺がそんなことを思っていると、ふと部屋の扉が開いて母様が顔を覗かせた。……そ、そう、ですか! シュゼット嬢、目が覚めたのですね……! そう思って、俺は「はい」とだけ返事をし、緩む表情を必死に取り繕いながらシュゼット嬢が休む部屋に足を踏み入れた。