【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
 部屋の中では、寝台に腰かけるシュゼット嬢がいて。その愛おしさに……俺は病み上がりのシュゼット嬢の身体に、タックルをかましてしまった。

「シュゼット嬢! よかった、本当に、よかった……!」

 そんなことを呟きながらシュゼット嬢の首筋に顔をうずめれば、シュゼット嬢は俺の胸を押してくる。でも、離れたくない。シュゼット嬢があのまま目覚めなかったら、そんな最悪のことが頭の中に何度も何度も思い浮かんできて、生きた心地がしなかったのだ。

「……アルベール様。私、ご迷惑をおかけしましたよね……」

 でも、それからしばらくして。シュゼット嬢はそんなことを申し訳なさそうに言ってくる。そんなの、別に構わないのに。シュゼット嬢にかけられる迷惑だったら、俺は嬉しい。むしろ、迷惑だなんて思わない。役得だって思う。だって、それはシュゼット嬢が気を許してくれているという証拠になるから。

「いえ、全然迷惑じゃないです! 俺は、シュゼット嬢が無事だったらそれでいいです! むしろ、役得ですよね。シュゼット嬢を抱っこできたのですから……!」
「途中までの私の感動を返してください。全部台無しですよ、最後の方の言葉で」

 そんなことを言って、俺のことを軽く睨むシュゼット嬢に、なんだか嬉しくなる。あぁ、いつもの調子が戻ってきてくれたようだ。そう思ったら、俺の心が弾む。そもそも、シュゼット嬢を抱っこできた時点で、役得というレベルを通り越しているのだ。シュゼット嬢、滅茶苦茶いい匂いがした……! しかも、すっごく軽いし柔らかいし……!
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