【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「でも、アルテュール様に再会して、私は実感したわ。……彼は、変わっていないって」
私に嫌われることを喜んでいる彼は、あの時のままだ。私に嫌われて、私に憎悪を向けられることを喜ぶような変態。それが、アルテュール・プレスマン様。面と向かって「変態!」と言ったこともあったわね。だけど、彼はそれを聞いてただにっこりと笑い、喜ぶだけだった。
「それは、お嬢様を諦めていないということでしょうか?」
「……それで間違いないと、思うわ。でも、もうあんな目に遭うのはこりごりよ」
そう言って目を瞑れば、アルテュール様にされた意地悪が蘇る。髪の毛を掴まれて引っ張られたり、大嫌いな虫を服につけられたり。そんな軽いものから、薄暗くて埃っぽい物置に閉じ込められたという最悪なものまで。さらには、その時アルテュール様は小屋の中で泣き叫ぶ私の声を、小屋の外で聞いていたというのだから質が悪すぎる。おかげで私はすっかり暗所恐怖症になってしまったというのに。
「……私、今でもあの時のことを悪夢で見るの。だから、彼が別のところに住むと聞いた時、嬉しかったわ。……けど、帰ってきていたのね」
私は寝台に横になったままそんなことを呟く。彼は私が十三歳の時、母親の実家に移り住んだ。曰く、そちらで教育を受けるとかなんとか。それに、私は歓喜した。もう彼に振り回されることも、嫌がらせをされることもない。そう、信じていた。
「はぁ、本当にどうして私ってこんなにも男運がないのかなぁ……」
天井を見上げて、そうつぶやく。アルテュール様との一件で、すっかり男性嫌いを拗らせてしまった私。それでも、家のためをと思ってアルベール様と婚約したのに。……何故、私にはこんなにも男運がないのかと問いただしたい。
「失礼いたします、お嬢様。婚約者のアルベール様から、お見舞いが届いておりますよ」
そんなことを考えていた時、別の侍女がお部屋に入ってきて封筒とお花を手渡してくれた。普通の厚さの封筒と、赤と青の薔薇が一本ずつ。……いや、病人に薔薇って。そう思ったけれど、二本だけになっている時点で成長されている。……そう、思うことにした。
私に嫌われることを喜んでいる彼は、あの時のままだ。私に嫌われて、私に憎悪を向けられることを喜ぶような変態。それが、アルテュール・プレスマン様。面と向かって「変態!」と言ったこともあったわね。だけど、彼はそれを聞いてただにっこりと笑い、喜ぶだけだった。
「それは、お嬢様を諦めていないということでしょうか?」
「……それで間違いないと、思うわ。でも、もうあんな目に遭うのはこりごりよ」
そう言って目を瞑れば、アルテュール様にされた意地悪が蘇る。髪の毛を掴まれて引っ張られたり、大嫌いな虫を服につけられたり。そんな軽いものから、薄暗くて埃っぽい物置に閉じ込められたという最悪なものまで。さらには、その時アルテュール様は小屋の中で泣き叫ぶ私の声を、小屋の外で聞いていたというのだから質が悪すぎる。おかげで私はすっかり暗所恐怖症になってしまったというのに。
「……私、今でもあの時のことを悪夢で見るの。だから、彼が別のところに住むと聞いた時、嬉しかったわ。……けど、帰ってきていたのね」
私は寝台に横になったままそんなことを呟く。彼は私が十三歳の時、母親の実家に移り住んだ。曰く、そちらで教育を受けるとかなんとか。それに、私は歓喜した。もう彼に振り回されることも、嫌がらせをされることもない。そう、信じていた。
「はぁ、本当にどうして私ってこんなにも男運がないのかなぁ……」
天井を見上げて、そうつぶやく。アルテュール様との一件で、すっかり男性嫌いを拗らせてしまった私。それでも、家のためをと思ってアルベール様と婚約したのに。……何故、私にはこんなにも男運がないのかと問いただしたい。
「失礼いたします、お嬢様。婚約者のアルベール様から、お見舞いが届いておりますよ」
そんなことを考えていた時、別の侍女がお部屋に入ってきて封筒とお花を手渡してくれた。普通の厚さの封筒と、赤と青の薔薇が一本ずつ。……いや、病人に薔薇って。そう思ったけれど、二本だけになっている時点で成長されている。……そう、思うことにした。