【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第3話 シュゼットの想い

「俺はシュゼット嬢が好きです! シュゼット嬢一筋です! シュゼット嬢しか、眼中にないのです!」
「わ、分かりました、分かりましたから、一旦落ち着いてくださいませ……!」

 今にも泣きだしそうなアルベール様を宥めながら、私はそんなことを言う。そして、ゆっくりと落ち着かれ始めたアルベール様を引き離して、私の方もほっと一息をつく。アルベール様は私から引き離されても、未だに私のドレスを握って「捨てないで……!」と告げてこられる。……いや、普通に考えれば捨てられるのは私ですよね? 立場的に考えたら。

「……いや、アルベール様。捨てられるのは私の方ですよね? 立場的に考えて」

 身分もアルベール様の方が上だし、容姿の良さもアルベール様の方が断然上。将来有望なのもアルベール様。もうここまで揃ったら、私がアルベール様に勝てる要素などない。だから、普通に考えて「捨てないで!」と言って縋るのは私のはずなのだ。……決して、アルベール様がおっしゃることではない。

「いえ! 俺はシュゼット嬢を捨てるなんてこと、考えたこともありません! 捨てられるのは俺の方だって、常々危機感がありましたし……」

 しょぼくれたようにそうおっしゃるアルベール様に、不意に胸がときめいた。って、いや、何故今更? そう思ったのだけれど、私の前でアルベール様がこんなにも感情を露わにしてくださったのは、初めてだ。だからだろう。そう自分自身に言い聞かせて、納得させる。と言いますか、私に捨てられる危機感なんて持ち合わせていらっしゃったのね。そうですか。私、どれだけ極悪非道な女だと思われていたのかしら?
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