【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「……えっと」

 一応、お手紙はいただいたら目を通さなくてはいけない。そう思って、私はアルベール様からのお手紙に目を通していく。一枚、二枚、三枚目……を呼んだあと、もうどういう感情になればいいかが分からなくなった。三枚びっちりに埋められたアルベール様のお言葉。それはまぁ、この際よしとする。滅茶苦茶読みにくかったけれど、それはまぁこの際構わない。問題は――……。

「これ、お見舞いのお手紙というよりはラブレターでは……?」

 そう思わせるほど、お手紙にはあま~いお言葉が綴られていたのだ。アルベール様、口は不器用でも甘い文字は綴れたのね……。そう思いながら、私は小さくため息をついていた。でも、婚約の解消をお願いするまでのアルベール様のお手紙って、結構素っ気なかった気がするのだけれど……。便箋二枚、隙間たっぷりで書かれていた気がするのよね……。

「……あっちはあっちで寂しいお手紙だったけれど、こっちはこっちで重すぎるお手紙だわ……」

 私はそんなことを呟いて、便箋を封筒に戻してエスメーにいつもの場所にしまっておくようにと指示を出した。いつもの場所とは、アルベール様からいただいたものを保管している場所である。一応婚約者ということで、いただいたお手紙等はすべて保管するようにしていた。贈り物も一緒に置いてあるけれど、数は少ない。というか、アルベール様は基本的に私への贈り物にお菓子の類を選ばれていたので、保管出来なかったというのも、ある。

「……はぁ、なんだかどっと疲れたなぁ」

 毛布に潜り込みながら、私はそんなことを呟く。でも、少しは成長されている……ようで、見直したかもしれない。この調子で成長してくださればいいのだけれど。……そもそも、愛が重いということはそれだけ一途という捉え方も出来るのだろう。……つまり、浮気の心配がないということ。クールナン侯爵と夫人を見ていると、そんな心配必要ないってわかるし。それに、他所で子供を作られると面倒だっていう話は、よく聞くし。

「あ、お嬢様。一つだけお伝えすることを忘れていました」

 そんなとき、先ほどアルベール様からのお見舞いの品を届けてくれた侍女が、戻ってくる。一体、何だろうか? そう思って私は「どうしたの?」と彼女に問いかけた。すると、彼女はにっこりと笑って「お見舞いに、来てくださるそうですよ」と私に告げた。……お見舞い? 一体、誰が?
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