【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第21話 婚約者の襲撃

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「シュゼット嬢! 生きていますか!?」
「……生きていますよ。というか、病人の部屋に『生きていますか!?』なんて言いながら入ってこられるなんて、不謹慎ですよ」

 午後二時。エスメーに「婚約者のアルベール様がいらっしゃいました」と聞いてから、約五分後。アルベール様が私のお部屋にやってこられたかと思えば、一番にそうおっしゃった。いや、本当に不謹慎ですよ。そもそも、「生きていますか!?」って聞いて、死んでいたら「死んでいます」って答えるのですか? 頭おかしいのではありませんか? まぁ、それは思うだけにとどめておきますけれど。

「あぁ、シュゼット嬢、久々ですねぇ。……しばらく会わないうちに、痩せましたか?」
「……バカなのですか? こんな短期間で痩せるわけないじゃないですか」

 私はそう答えてため息をつく。そんな短期間に痩せる方法があるのならば、私はそれを商売にして一財産築く。そうすれば、カイレ子爵家の持つお金が潤うから。脱・貧乏生活が出来るもの。……はぁ、アルベール様にはそんな貧乏人の思考は分からないか。

「シュゼット嬢に、お見舞いを持ってきました!」
「……待ってくださいな。昨日、お見舞いの品は受け取りました。あと、声が大きいです」

 ただ耳を塞ぎながら、私はそんなことを言う。ちなみに、私の今の格好はラフなワンピースだ。さすがにアルベール様がいらっしゃるのに寝間着なんて来ていられませんよ。そう思いながら、私は寝台から起き上がってお部屋の端にあるソファーに向かう。もちろん、アルベール様も一緒に移動していただいた。
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