【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「悪いけれど、経験上病気で苦しいときにあんたみたいなうるさいのが来たら、追い出したくなるのよ。ね、旦那様?」
「そう言えば、俺もティナが熱を出したって聞いて、屋敷に突撃しましたっけ! 窓から追い出されましたけれど」
「そう言うことよ。窓ガラスを身体で割りたくなかったら、きちんと『ここで』手紙を書くのね」

 ……母様とシュゼット嬢は根本が違うのに……。そう言う意味を込めて視線を母様に向ければ、睨まれてしまったので黙って座ることしか出来なかった。そして、従者に便箋とペンをもらう。……さて、何て書きましょうか。うぅ、書きたい言葉が思い浮かびすぎて何から書けばいいかが、分からない。なのに、便箋は三枚しかない。……追加してもらわないと。

「言っておくけれど、それ以上の便箋はないわよ。病人に十枚以上も重苦しい愛を綴った手紙を、読ませるつもり?」
「……どうして、母様がそれを……!」

 何故、俺がシュゼット嬢を思って一回の手紙で十枚以上の便箋を使っていることを知っているのでしょうか……? 俺がそう言えば、「この人も同じことをするから」と言って自分の腰に巻き付く父様を指さした。いや、普通妻にここまで雑な扱いを受けたら、普通の当主ならば怒るだろう。

 でも、父様は違う。母様に引っ付いて嬉しそうだ。……あれは、世に言う忠犬というのだろう。まぁ、母様以外の女性には基本的に無表情で接しますけれどね。表情金が死んでいますよ、はい。

「遺伝って怖いわぁ。あと、お見舞いの品は花にしなさい。くれぐれも、ケーキなんて送るんじゃないわよ。お菓子を送りたかったら、プリンとかそう言うものにする」
「……はぁ」

 花、か。う~ん、この間シュゼット嬢に大量の薔薇を贈って怒られたばかりですしねぇ……。あぁ、そうだ。赤と青の薔薇を一本ずつ贈りましょう! それだったら、きっとシュゼット嬢も許してくれるはず! 俺って頭良かったんですね!
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