【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第23話 甘えないでください!

 ☆★☆

「あぁ、本日もシュゼット嬢はなんとお美しくて可愛らしいのでしょうか! そのワンピースもシュゼット嬢を存分に引き立てていて、アクセサリーの類も――」
「アルベール様、黙ってください。さっさと行きましょう」
「はい!」

 私が元気になった三日後。アルベール様と私の予定が合致したということもあり、私とアルベール様はお約束通り街でデートをすることになった。出向く街は、王都にある王国内でもトップクラスに大きな街だ。あそこに行けば、変えないものはないとも言われているくらい。そう思いながら、私はカイレ子爵家まで迎えに来てくれたクールナン侯爵家の馬車に乗り込む。ちなみに、この馬車には家紋が内側にしかついていない。理由は貴族の馬車だとバレないため……らしい。やっぱり、高位貴族になるとそう言うことにも注意していらっしゃるのね。

 私が馬車に乗り込むと、アルベール様が乗り込んでこられて御者が扉を閉めてくれる。そして、ゆっくりと馬車が走り出したのだけれど……アルベール様、やっぱり近くないかしら? どうしてこんなにも広いのに、ぴったりと私の真横にいらっしゃるのよ。そう思って私が少し移動すれば、アルベール様もついてこられる。あぁ、これはきっと延々と続くわね。もうあきらめましょう。

「シュゼット嬢、可愛らしいですねぇ。なんというか、女神というか天使というか……!」
「私は人間です。神様でも天使様でもありません。アルベール様は私のことを神聖化しすぎなのです」
「シュゼット嬢は神聖化してしまうくらいには、尊いんですよ!」

 私を見つめながら、とんでもなく整ったお顔でアルベール様はそうおっしゃる。いや、こんな普通よりも少し上くらいの容姿の持ち主を神聖化していたら、アルベール様はむしろ神格化されそうだわ。……まぁ、中身でマイナスだけれど。プラマイゼロどころか、圧倒的にマイナスだけれど。

「……アルベール様は、容姿はいいですが中身でマイナスですよね。誰も付き合えませんよ」
「そう言っていますが、シュゼット嬢は俺に付き合ってくれていますよね! 俺はそれが嬉しいですし、シュゼット嬢以外の女性は必要ありませんから!」
「それは仕方がなく――ぐるじぃ、ぐるじぃです……!」
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