【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
 その後、しばらくリーセロット様はご自分がいかにアルベール様を慕っているのかを語っていらっしゃった。時々、私のことを露骨にバカにしながら。アルベール様の表情は、いろいろな意味で怖くて見れなかった。そのため、私はリーセロット様が連れている従者の方々に視線を向ける。山の様に箱やら紙袋やらを持っていらっしゃるそのお姿は……その、少々哀れだ。

「……リーセロット嬢」

 そんな時、ふとアルベール様が声を発せられた。そのお声は少し震えているような気がする。でも、それは多分だけれど怒りから。私はここ数週間でアルベール様の些細な変化にも気が付いてしまえるようになってしまった。……喜ぶべきなのか悲しむべきなのかは、分からない。

「悪いですが、俺は貴女のお気持ちには応えられません。そもそも、俺がシュゼット嬢に惚れているのです。彼女が好きで、だから無理やり婚約を取り付けてもらった」
「……で、ですが……」
「それに、貴女ははっきりと言って俺の好みじゃありませんから。人を貶めるようなことしか言わない人は、嫌いです。上の人間に媚びへつらいのは別にいいですよ? ですが、見下した相手を露骨に貶めるのはどうかと」
「し、真実、ですから……!」
「そもそも、はっきりと言いますがシュゼット嬢は俺の婚約者。つまり、クールナン侯爵家が認めた時期夫人です。……そんなシュゼット嬢を貶めるということは、クールナン侯爵家を敵に回すということですよ?」
「……っつ!」
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