【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
「話すことが出来たら、きっと私の乗り越えられると思うのよ。自分の中でも、何かが変わる気がする。……そう、思うのよ」
「そう、でございますか。お嬢様がそう思われるのならば、私は止めません」
そう言った後、エスメーは「お茶をお淹れしました」と言ってくれる。それから、寝台のすぐ横にある小さなテーブルの上にカップを置いてくれた。……そう言えば、丁度喉が渇いているわ。
私はそのお茶を口に運びながら、じっと過去のことについて考えていた。思い出さないようにしていた、忌々しい記憶たち。今でも正直なところ口になんてしたくないし、思い出したくもない。だけど、逃げ回っていても何も解決しないのだ。アルテュール様ご本人がこちらに戻ってきてしまった以上、逃げてばかりじゃいられない。……それに、私の周囲を傷つける可能性がある。
「お嬢様。私、は、その……お嬢様のことを、大切に思っております。ですので、お嬢様には傷ついてほしくないと、思ってしまいます」
「……知っているわ」
「ですから、どうかご無理はしないでくださいませ。お嬢様が苦しむ姿を、見たくはありません」
エスメーのその言葉に、私は静かに首を縦に振った。そうよ、私には味方がいるの。お父様もお母様も、お兄様もお義姉様も。エスメーをはじめとした使用人たちも。……だから、きっと大丈夫よ。それに、いざとなったらカトレイン様も力になってくださると、言ってくださったし。
「分かっているわ。ごめんなさいね、迷惑ばかりかけてしまって」
「いえ、私が勝手に心配しているだけですので……。お嬢様の迷惑など可愛らしいものですし。もっともっと、迷惑をかけてくださってもいいのですよ?」
「分かったわ。じゃあ、ほどほどに迷惑をかけてあげる」
そう言って、私とエスメーはどちらともなく笑いあった。そう言えば、もうすぐアルベール様との二週間に一度のお茶会の日だ。……その日に、お話しよう。私はそう心に決めてまたお茶を口に運んだ。……その温もりが、心を落ち着かせてくれた。
「そう、でございますか。お嬢様がそう思われるのならば、私は止めません」
そう言った後、エスメーは「お茶をお淹れしました」と言ってくれる。それから、寝台のすぐ横にある小さなテーブルの上にカップを置いてくれた。……そう言えば、丁度喉が渇いているわ。
私はそのお茶を口に運びながら、じっと過去のことについて考えていた。思い出さないようにしていた、忌々しい記憶たち。今でも正直なところ口になんてしたくないし、思い出したくもない。だけど、逃げ回っていても何も解決しないのだ。アルテュール様ご本人がこちらに戻ってきてしまった以上、逃げてばかりじゃいられない。……それに、私の周囲を傷つける可能性がある。
「お嬢様。私、は、その……お嬢様のことを、大切に思っております。ですので、お嬢様には傷ついてほしくないと、思ってしまいます」
「……知っているわ」
「ですから、どうかご無理はしないでくださいませ。お嬢様が苦しむ姿を、見たくはありません」
エスメーのその言葉に、私は静かに首を縦に振った。そうよ、私には味方がいるの。お父様もお母様も、お兄様もお義姉様も。エスメーをはじめとした使用人たちも。……だから、きっと大丈夫よ。それに、いざとなったらカトレイン様も力になってくださると、言ってくださったし。
「分かっているわ。ごめんなさいね、迷惑ばかりかけてしまって」
「いえ、私が勝手に心配しているだけですので……。お嬢様の迷惑など可愛らしいものですし。もっともっと、迷惑をかけてくださってもいいのですよ?」
「分かったわ。じゃあ、ほどほどに迷惑をかけてあげる」
そう言って、私とエスメーはどちらともなく笑いあった。そう言えば、もうすぐアルベール様との二週間に一度のお茶会の日だ。……その日に、お話しよう。私はそう心に決めてまたお茶を口に運んだ。……その温もりが、心を落ち着かせてくれた。