浮気について彼女が考えたこと
「彼からだわ」
私はうきうきとスマホに出た。
「彼って……」
戸惑う男にかまわず、電話の彼と話す。
「……うん、大丈夫、今夜はあいてるから。じゃ、すぐに行くね」
私がスマホを切ると、男が怒り出した。
「お前、ほかに男がいたのか!」
「最初にそう言ったじゃん。それでもいいって言ったのはあなたなのに。なんで自分だけが特別だと思うの?」
私はあきれた。
浮気をしているのが自分だけだと思うなんて、なんてバカだろう。女を大事にしてないくせに大事にされて当たり前なんて、どれだけ女をバカにしているんだろう。
しかも、私は最初にちゃんと言ったのだ。浮気相手だよ、と。
「俺のこと好きだって言ったじゃん」
「五番目くらいに好きだったよ。一番好きな人にプロポーズされたから、今日で別れるつもりだったけど。結婚したら浮気はしないって決めてるの」
「五番目かよ!?」
男が愕然と言う。
「あなたみたいなちんけな男とつきあうと、彼の素敵さを再確認できて良かったわ。今までありがと」
私がそう言うと、女性ははっとしたように男を見た。
「私もあなたと別れるから!」
「え?」
「目が覚めた。キープですらない、五番目程度の男にこだわってても仕方ない。もっといい男探す」
「そんな!」
私と女性は男を置いて立ち去った。
男はただひとり、ホテルのロビーにポツンととりのこされていた。
終