私と彼の溺愛練習帳 番外編
 仕事を終えた夜、惣太は珍しく一人でバーに寄った。

 バーなどあまり来ない。が、この日はなんだか飲みたくなってしまった。
 一人で感傷にひたりながら飲みたい。

 いきつけなどないから、通りすがりに見つけた店にふらりと寄った。

 カウンター席に、ボックス席が二つ。その一つには二人の女性が向かい合って座っていた。

 惣太は迷わずカウンターに行き、シャンディガフを頼んだ。酔いたい気持ちもあったが、あまり強いお酒を飲む気にはなれなかった。

 人づてに、雪音が恋人からプロポーズされたと知った。
 結局、恋人の彼は雪音を見つけて仲直りができたのだ。
 そう思い、ぼんやりと飲んでいたときだった。

「あ!」
 元気な声が聞こえて、惣太は顔を上げた。
 女性が目を丸くして惣太を見ていた。彼女は確か雪音の後輩で平田美和だ。

「先輩の元カレさん!」
 惣太は苦笑した。

「その言い方はやめてほしいな」
「じゃあ……メーカーさん」

「遠野惣太です」
 惣太は勤め先の電機メーカーの名刺を出して渡した。彼女は受け取った名刺を眺めたあと、バックに入れた。
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