私と彼の溺愛練習帳 番外編
「遠野さん。なんでここに?」
「やけ酒、かな」

「先輩が結婚しそうだから?」
「違うけど、そんな感じ」

「未練がましいですね」
「ちょっと違う。俺が幸せにしてあげられなかったなって残念に思ってるだけ」

「そういうのを未練て言うんですよ」
 美和はバーテンに軽いカクテルを注文し、惣太の隣に座った。

「容赦ないな」
 惣太は苦笑し、グラスに残った酒を飲み干して席を立った。

「帰るんですか?」
「女性と一緒には飲まないと決めたから」

「女で失敗しましたもんね」
 美和は笑った。
 裏表のなさそうな笑顔が、惣太にはまぶしかった。

「誰だって失敗はありますよ」
「取り返しのつかない失敗だった」

「そうですね。浮気して先輩を逃がすなんて、人生最大の失敗です」
「きついな」
 惣太は大袈裟に胸をおさえて見せた。

 バーテンがカクテルを美和の前に置いた。
< 17 / 23 >

この作品をシェア

pagetop