私と彼の溺愛練習帳 番外編
「話、聞いてあげてもいいですよ」
「遠慮しておくよ」

「せっかくこんないい女が誘っているのに」
「女性からの誘いほど怖いものはないと知ったからね」
 惣太は苦く笑った。



 彼が歩き出した直後、ボックス席から女性の声が聞こえた。

「……でね、キスマークを偽装してやったのよ。そしたらあいつ、自分がつけたと思って慌ててさ」
 女が得意げに言う。
 惣太はハッとして二人を見た。

「どうやるの?」
 向かいの女は興味深そうにきく。

「アイシャドウでちょちょいっとね」
「それは本当か!?」
 惣太の声に、女性たちが驚いて彼を見る。

「なによあなた」
「キスマークは偽装できるのか!?」

「こわ!」
「行こう」
 女二人は連れだって席を立った。

「待ってくれ!」
 追いかけようとした惣太の腕を、いつの間にかカウンターから出て来たバーテンがつかんだ。
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