私と彼の溺愛練習帳 番外編
「迷惑行為は困ります」
「……すみません。俺が帰ります。あなたがたの分はお詫びに俺がおごります」
 惣太は謝り、会計した。

「ラッキー!」
「もっと高いの飲めば良かった!」
 はしゃぐ女性の声が、出て行く惣太の背に突き刺さった。



 店を出ると、夜をかき消すような街の明かりが気に障った。
 カップルが笑いあい、じゃれ合いながら、横を通り過ぎる。

 惣太は息をついて、歩きだす。
 春の夜は温かいのに寒い。その矛盾が、まるで自分のようにも感じられた。

 とぼとぼ歩いていると、タタッと軽い足音が聞こえた。

「メーカーさん」
 呼ばれて振り向くと、美和が息を切らして立っていた。

「どうしてここに」
「おごってくれたでしょ。お礼を言わないと」
 惣太は会計のとき、美和の分も払っていた。

「俺のせいで居心地悪くなったでしょ。お詫びに」
「メーカーさん、良い人っぽいのに、なんで浮気したんですか?」
「直球だね」
 惣太は苦笑した。

 美和は自販機を見つけ、カフェオレを二本買った。
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