私と彼の溺愛練習帳 番外編
「昨日は激しかったわ」
 言われて、惣太は自分を見る。

 服を着たままだったが、上着ははだけていて、キスマークがいくつもついていた。
 彼女の胸元にもいくつものキスマークがあった。

 そんなはずはない。
 昨日はベッドに横になってからの記憶がない。今まで、酔って記憶がなくなることはなかった。こんなことは初めてだ。

 体の関係はあったのか、いや、絶対に違う……と思いたい。

 思わずゴミ箱を見るが、空だった。やはり、行為はしていないのではないか。
 だが、それなら彼女の胸元についたキスマークはなんだというのか。

「雪音と別れて私とつきあって」
 しなだれかかる彼女を、とっさに振り払った。

「なにするのよ」
 彼女はにらむように惣太を見た。

「ご、ごめん」
 惣太はうつむく。
「このことは雪音に言うから」
 惣太は青ざめた。

 雪音から彼女の意地の悪さは聞いている。どんなにひどく雪音を傷付ける言い方をするか、想像もつかない。せめて、少しでも雪音を守らなくては。

「……君とつきあうよ。だから、雪音には自分で言う」
 惣太はそう言った。
 にやり、と愛鈴咲は笑った。
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