私と彼の溺愛練習帳 番外編
 プロポーズは成功したか?

 短いメッセージに添付されていたのは、大空に描かれたVeux-tu(ヴ テュ ) m’épouser (メプゼ)の文字。

 そうだった。
 そこに思い至り、閃理は額に手を当てた。

 父親の眼の前で、プロポーズをしてしまった。なんて恥ずかしいことを。

 父を招待したときにはそれに思い至らなかった。準備で頭がいっぱいだったし、彼女の思い出に残るプロポーズをしたくて必死だった。

 雪音さんのこととなると、視野狭窄になりがちだ。
 閃理は苦笑して雪音を見た。

 彼女の照れた笑顔がかわいい。

 まあいいか。
 彼女と一緒にいられる幸福に比べたら、全部些細なことだ。

「帰ったらまたココアを飲もうか」
「楽しみにしてるね」

 雪音に声をかけると、雪音はにこっと笑った。
 だから閃理も心からの笑顔をふんわりと返した。





 結局このプロポーズは「夜空の公開プロポーズ」としてネットニュースにもなってしまい、閃理はまた頭を抱えることになったのだった。



プロポーズのその後・終
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