私と彼の溺愛練習帳 番外編
 惣太に紹介された仕事にキリをつけて辞めた雪音は、いったん閃理のもとに戻った。
 荷物は少なかったから、迎えに来た閃理の車にすべて載せることができた。

 すでに季節は五月。
 二人で運び終えると、汗だくになってしまい、閃理がアイスココアを淹れてくれた。

 帰って来た、と雪音はうれしくなった。すでに見慣れた家具たち。白い壁に薄いグレーのカーペット。ダークグレーのソファに卵色のやわらかなクッション。

 ソファに並んで、閃理と一緒にココアを飲む。
 甘い味にミルクがまろやかだった。冷たさが喉に心地いい。

「思ったんだけどさ」
 閃理がコップをテーブルに置いて言い、雪音は彼を見た。

「雪音さん、事務として僕に雇われてよ。そしたらずっと一緒にいられる」
 雪音は驚いた。が、すぐに答える。

「嫌よ。けじめがなくなりそうで怖いわ」
「大丈夫だよ。人が必要なのは本当なんだ」

「ほかに人を雇ったほうがいいよ」
「男性を雇ったら雪音さんと会うこともあるでしょ? 僕が嫉妬でどうにかなっちゃう」

「女性を雇ったらいいじゃない」
「僕がほかの女と仲良くなってもいいの?」
 怒ったように閃理が言う。
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