別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「お姉さんには通用しないか。ブランドに疎そうだもんね」
 冬和の全身を眺めて彼は言う。

「失礼ね」
「ごめん。女性ってブランドが好きっていうイメージがあるから。御曹司だって言ってブランドを身に付けてプレゼントして豪華ディナーに誘えば、たいていはコロッといってくれるんだもん」
 屈託なく彼は言う。

「ああ、すごいふられた。傷付くなあ。オレ、モテるんだけど」
「男に不自由してないの」
「言うね」
 彼がくすくす笑うと、無邪気な雰囲気が漂った。

 冬和はどういう顔をしていいのかわからなかった。
 不自由してないのは嘘ではない。欲しいとも思っていないからだ。
 ちらりと浩之が頭に浮かぶ。
 そもそも、あの男と付き合ったのが間違いだったのだ。いや、根本的に恋人なんて作らない方が良かったのだ。

「オレ、御園久遠。お姉さんは?」
「言う必要を感じないわ」
 久遠は軽く肩を竦めた。

「それじゃさ、また会うことがあったら運命だから教えてね。お茶もおごるから」
 久遠はそう言って夜の中に消えた。
 ずいぶんと都合のいい運命ね、と冬和は顔をしかめて見送った。
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