別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
2 別れさせ屋
翌日の冬和は、どんよりした気分を抱えてて仕事をこなした。
浩之の営業先の資料を作っていると、気分はさらに沈んだ。
ほかの仕事をしたくなるが、本来の優先順位に従って進める。
同じ職場というだけでもストレスなのに。
「浩之さーん、この書類だけどぉ」
甘え声で浩之に話し掛ける杏奈。
「職場じゃ名前で呼ぶのダメだって。課長に怒られるよ」
「ごめん、これだけど」
「これは百合宮さんに聞いて」
「えー、でもぉ」
「嫌でも仕事なんだからわりきって」
無神経さに腹が立つ。「嫌でも」なんてよく「嫌」本人の近くで言えたものだ。
かといって、ここでなにかを言って周囲に注目されるのも嫌だ。
反応したら負けだ。無表情を装い、仕事を進める。
それを見た周りがひそひそと話す。
「あの二人、ひどくない?」
「広瀬さん、いつも百合宮さんに仕事をおしつけてるよね」
「その上男をとられて、やってらんないわよね」
「よく平気よね」
「それでフラれたんじゃない?」
心が凍えていく。