別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「女性って運命が好きじゃん」
 彼は甘く微笑した。その目は艶やかに冬和を見る。

「あの女性にも言ってたわね」
「出会うのも別れるのも運命。便利だよ」
「じゃあ私が殴られたのも運命ね」
「そういうことに……なっちゃうね」
 彼の唇が嫣然(えんぜん)と弧を描く。

「よく笑うわね」
「そのほうが敵が減るし、かわいがってもらえるから」
「計算ずくなんだ」
「処世術って言って」
 彼は笑顔を崩さずに言った。

「それで、お姉さんの名前は?」
「百合宮冬和」
「とわってどういう字?」
「季節の冬に、平和の和」

「永遠って書いてとわ、じゃないんだ。もしそうなら久遠に似てる、運命だねって言えたのに」
「そう」
 冬和は無関心に頷いた。

 届いたコーヒーにミルクをいれて一口飲む。まろみを帯びた苦さが口に広がった。
「改めて。この前は巻き込んでごめんなさい」
「謝罪なんて良かったのに」

「社長がきちんと謝れって言うから」
「社長?」
「オレ、別れさせ屋なんだ。その社長」
 聞きなれない言葉に彼を見ると、彼は婀娜(あだ)っぽく彼女を見返した。
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