別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 別れさせ屋が別れるって変な感じがした。目的を達成したなら、別れるのは当然なのだろうけど。

「ろくでもない仕事ね」
「やっぱりそう思う?」
楽しそうに久遠は言う。
「自分で別れも言えない男に頼まれて別れさせるんでしょう? 女の敵じゃない」

「敵のつもりはないけど。恋敵の女性から頼まれたり。ストーカーに悩む女性やDVだんなと別れたい女性……の場合、がんばるのは女性の別れさせ屋だけどさ」
 久遠は肩をすくめて見せた。

「危ない仕事よね。恨まれそう」
「別れさせ屋ってバレて慰謝料請求されたこともあるよ」
「とんでもない金額になりそう」
「大丈夫、社長がうまくやってくれたから。詐欺だ、と警察にかけ込まれたときは焦ったけど」

「大ごとじゃない。どうなったの?」
「自由恋愛で押し切ったよ。そのときオレ未成年でさ。相手が30過ぎた人だったから、相手が警察に怒られてた」

「あきれた。いつか刺されるわよ」
「そのときはそのときかな」
 久遠は苦笑し、髪を掻き上げた。その腕の動きにすら色気が漂う。彼が別れさせ屋のせいか、と冬和はなんとなく納得した。

「未成年で別れさせ屋ってできるものなの?」
「法律のことは社長任せだから知らない」
「年上専門なの?」
「離婚したい人が多いから、結果としてそういう年齢になるだけ」
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