別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「御曹司っていうのは別れさせ屋の設定なの?」
「そう思う?」
「御曹司が別れさせ屋なんてやるわけないし。ミソノ商事と同じ苗字だから御曹司って言いやすそう。でも偽名?」

「お姉さんには本名。仕事のときは偽名。実際、ヒモみたいなものなんだけどさ」
 くすくすと彼は笑う。

「女のところから追い出されそうなの。お姉さんのところにおいてくれない?」
「嫌」
 冬和は即答した。

「やっぱりダメかあ」
「設定としてはいいわよね。御曹司だからなにもかも満たされて人生に嫌気がさすとか、金に群がる人たちに嫌気がさすとかして、人間不信で別れさせ屋になるっていうの」

 久遠はうれしそうに冬和を見た。
「オレのうち、両親が冷え切っててさ。だけど金だけは満たされてた」
「へえ、そう」

「別れさせ屋には食いついてくれたのに、オレに興味なさそう。普通、同情するとこじゃない?」
「それで喜ぶタイプには見えないけど」
「オレ、愛に飢えてるんだよ」
 彼はいたずらっぽく彼女を見る。

「あなたが本当に壊したいのはご両親の仲? 別れさせ屋をやることでちゃんと夫婦が壊れることに安心していたのかしら」
 冬和の言葉に、久遠は驚いた。
< 18 / 62 >

この作品をシェア

pagetop