別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「正面きってそんなこと言う人、初めてだよ」
「うちも似た感じだったから。でも、さっさと別れればいいのにと思う反面、両親が別れなくて良かったとホッとしてるの」

「なんで?」
「わからない。わかる気もないから考えない」
 ふうん、と久遠は答える。それから冬和をじっと見つめて言った。

「うちの両親、とっくに別れてる。お姉さんの理論でいくと、人はいつか別れるって確認していることになるのかな?」
「そうかもね。人はいつか別れるもの。つらくても普通のことって」

「それ、お姉さんのことかな」
「ずばっと言うわね」
「お互いさま」
 彼は目だけで笑う。

「別れさせ屋なんて人間不信になりそう。でも、社長のことは信じてるのね。言われて謝罪に来るくらいだもの」
「恩人だから。家出して路頭に迷ってたとき、拾ってもらった。四十過ぎの独身バツイチ、美人」

「その情報、いる?」
「いるよ」
 くすくすと久遠は笑う。

「社長のところにおいてもらえば?」
「それもちょっとなあ。めんどくさいけど部屋買うかあ」
「別れさせ屋ってそんなに儲かるの?」
「親の金」

 迷いなく久遠は答える。本当に御曹司なのか冗談なのか、冬和には判断がつかない。だが、もう会うこともないだろうから、関係のないことだ。

「この仕事で探してるものが見つかるかもねって社長に言われたんだ」
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