別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「適当すぎない?」
「他人なんてそんなものよ」
 冬和はそしらぬ顔で言った。

「ごちそうさま。もう行くわね」
「さみしいなあ」
 久遠は悲しそうに冬和を見た。
「運命ならまた会うでしょ」
 冬和はにこっと笑ってみせて店を出た。からん、とドアベルが鳴って、ドアは閉じた。



 翌日、冬和は驚いた。
 杏奈の不備を直した仕事が、なぜか杏奈が一人でやりとげたことになっていた。やり直しの件は報告済みなのに、課長はなにも言わない。
 怒りとも落胆ともつかない気持ちがもやもやと広がる。

 それでも無難に仕事をこなし、定時に会社を出た。
 直後に、青年が笑顔で駆け寄って来た。今日もオシャレで、色気にあふれている。

「やっぱりまた会った。運命だよ」
「安い運命ね。待ち伏せておいて」
 冬和は呆れた。

「よく会社がわかったわね」
「調べたらすぐだった。またお姉さんに会いたくて」
「そうやって口説くのね」
「そう」
 久遠は甘やかに笑った。
「またお茶につきあってよ」
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